第5回 篝狂言『演目』
1. 『火入れ冠者(ひいれかじゃ)』
果報者茂山千之丞
太郎冠者茂山童司
能管演奏野中久美子
能管奏者 野中久美子をゲストに迎えた、『第5回向日明神篝狂言』のための創作狂言です。
夕焼けに染まる鎮守の森に鐘の音が聞こえ、笛の音とともに野中久美子登場し会場へ消えます。名乗りもせず、果報者と太郎冠者が鎮守の森での開催を喜び、舞台からカッポ酒を振舞います。大向こうが飛び交い舞台と客席が一体になる演者と観客で創る古の狂言の復元です。
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2. 『萩大名(はぎだいみょう)』
大名茂山茂
太郎冠者茂山逸平
庭の亭主丸石やすし
大名が主役(シテ)として活躍する狂言を「大名狂言」と言います。そこに登場する大名は例外なく都を遠く離れた「遠国(おんごく)」に住む成り上がり大名ですが、そうした彼らが都で引き起こすユーモラスな事件をテーマにした「大名狂言」が数番あり、「萩大名」はその中でも代表的な名作といわれています。
気晴らしに遊びに行った庭園の主から当座(即興の和歌)を所望された彼の大名、予め太郎冠者から教えられていた「七重八重、九重と思いしに、十重咲きいずる、萩の花かな」と言う一首を読むことが出来るでしょうか・・・。
わずか三十七文字の和歌が憶えられないような愚鈍な大名ですが、それとは裏腹に愛すべき稚気が横溢して、明るくて健康な笑いの世界に観客を誘います。
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3. 『寝音曲(ねおんぎょく)』
主人茂山あきら
太郎冠者茂山千之丞
ご存知の太郎冠者が主役の狂言です。
主人が彼の私宅を通った時、たまたま謡を口ずさんでいる太郎冠者の声を聞きます。太郎冠者が謡を歌うことを初めて知った主人は、翌日早速自分の前で謡って聞かせろと命じますが、来客の接待に毎回謡わされてはたまったものではないと思った彼は、人前では絶対謠えと言われない名案を思いつきます。さてその名案とは・・・・・?
曲中で太郎冠者は狂言小謡を2曲歌います。「小原舞」と「放下僧」で、共に室町歌謡の代表作とされています。
今回上演の大蔵流の台本では、この「寝音曲」に限って、最後の部分が狂言の常套手段である、「遣るまいぞ遣るまいぞ」「許させられい許させられい」という通常の「追い込み」のパターンではなく、主人が「今一つ歌うて聞かせ。まず待てまず待て」と言いながら後を追って引っ込む方になります。これは近世以降の主従関係とは異なった中世特異の「奉公」関係による主人と下人との結び付きを、物語っているのかも知れません。
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『祇園獅子舞』
祇園祭は平安時代の前期にはじまったとされていますが、後期に作られた「年中行事絵巻」に当時の様子が描かれています。山や鉾はなく、7月24日に行われる花笠巡行が当時の様子を伝えており、この中に獅子舞が見えます。
祇園獅子舞は昭和43年、茂山千之丞さんの振り付けで、八坂神社青年部祇園獅子研究会が復活させたもので、47年から女子会員が参加、全国に珍しい男女の獅子舞として花笠巡行の先頭を努め、八坂神社の神楽殿で奉納されます。
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