第2回 篝狂言『演目』

1. 『火入れ冠者(ひいれかじゃ)』

果報者茂山千之丞
太郎冠者茂山童司
火渡し小野廣一
足立敏幸
高木正温
宇治田楽祭り実行委員会
八坂神社青年部

 宇治田楽と八坂神社の祇園獅子舞ではじまる「第2回向日明神篝狂言」のための新作。小説「櫻守」の舞台となった桜の苑にまつわるアドリブなど、生きた狂言の始まりにふさわしい内容となった。

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2. 『昆布売(こぶうり)』

大名茂山あきら
昆布売り茂山茂

 狂言に登場する大名は江戸時代の「一国一城の主」といったお殿様ではありません。地方のチョっとした地主ぐらいの身分の男です。中には家来がたった一人と言うカワイイ大名も出てきます。そうした“自称”大名を主役(シテ)とした一類の作品を「大名狂言」と呼んでいますが、『昆布売』はその中でも傑作の一つです。
 ところで、人前で見栄を張りたいのは古今東西を問わぬ人間心理です。ここに登場します例の大名も、都への道中、自身で太刀を持っているのは何ともカッコ悪くてたまりません。そこで通り掛かった昆布の行商人に無理やり太刀を持たせて、さも自分の家来を連れて歩いているように傲慢に振舞いますが、やがて主客転倒すると言う、中世の風刺であり、また狂言の笑いの源泉の一つである「下克上」をモチーフにした名作狂言です。
 作品中で歌われる「平家節」「小唄節」「踊り節」は、室町時代民間で流行っていた当時の流行歌です。

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3. 『素袍落(すおうおとし)』

主人茂山童司
太郎冠者茂山千之丞
伯父丸石やすし

 太郎冠者が主役の「大名狂言」でも屈指の名作です。
 彼の主人が伊勢参りを思い立ちます。そして何時か「参宮に行くのなら誘ってくれ・・・」と伯父が言っていたのを思い出し、まあ参加しないだろうと思いながらも、念のために太郎冠者を使いにやりますが、その時「明日の伊勢参りにお前を供に連れる事を伯父には内緒にしておけ」と注意します。太郎冠者がお供をすると知ったら、あの裕福でよく気の付く伯父は、彼に餞別をくれるに違いない。そうすると主人としては、伯父の召使いたちに土産ものを買って帰らなければならないからです。ところが太郎冠者は自分がお供をすることを簡単に白状してしまいます。そして、門出の祝い酒をご馳走になり、おまけに餞別の素袍(礼式用の衣装です)まで頂戴し、祝い酒に酔いしれながらもその素袍を一生懸命に主人に隠そうとするのですが、つい主人の目の前で落としてしまうのです。
 徐々に酔っぱらっていく太郎冠者の酔態がシテ役者の見せ所です。この狂言は「素襖落」とも書き、六代目尾上菊五郎や現中村勘三郎がお得意の歌舞伎踊りにもなっています。

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